家庭薬の昔 日々進歩する家庭薬の昔をお伝えします!

季節の生薬について

生薬とは、植物・動物・鉱物などの天然物を簡単に加工して用いる薬のことを指しますが、ほとんどの生薬は薬草や薬木といった植物由来です。もちろん植物によって旬は異なるため、春夏秋冬、それぞれの季節の生薬があると言えます。ここでは季節ごとに、生薬として用いられる薬草と薬木を紹介いたします。

秋の薬木 クコ:ナス科生薬名:枸杞子・地骨皮・枸杞葉(クコシ・ジコッピ・クコヨウ)

  • 秋の薬木 クコ:ナス科 生薬名:枸杞子・地骨皮・枸杞葉(クコシ・ジコッピ・クコヨウ)
  • 秋の薬木 クコ:ナス科 生薬名:枸杞子・地骨皮・枸杞葉(クコシ・ジコッピ・クコヨウ)

平安時代中期に丹波康頼によって編纂された日本最古の医学書「医心方」の「枸杞の効用と服用方法」の項にこのような話が載っています。
「ある日のことです。1人の年若い婦人が、年老いた老女を棒でたたいています。それを見た通りがかりの者がそのわけを尋ねると、その婦人はこう言いました。
『これは他でもない私の子供のひ孫です。家に良薬があるので、飲ませようとしてもいうことを聞きません。そのためこんなに老いてしまい、病で歩くことも不自由になってきました。だから、たたいてなんとか薬を飲まそうとしているのです』
驚いて婦人に年齢を尋ねたところ、『私は373歳です』と答えたのです。
「枸杞を長期にわたって服用すると、病を除いて寿命をのばし、人を聡明にし、身体を軽やかにし、気力を増進し、冷え性を治し、熱を下げます。百日間にわたって服用を続ければ、 あらゆる病がことごとく治り、目も耳も他人に分からないところまで、よく分かるようになります。
千金を与えられても伝えてはなりません。」
枸杞は不老長寿の薬とされていたのです。

クコは学名をLycium chinenseといい、東アジアを原産とするナス科の植物です。
枸杞の名の由来はカラタチ(枸橘)のような棘があり、コリヤナギ(杞柳)のように枝がしなやかなことからきています。

生薬として、果実を枸杞子といい、成分にベタイン、ゼアキサンチン、βカロテンなどを含み、強壮、新陳代謝増強を目的に、根皮を地骨皮とよび、成分にベタイン、リノール酸を含み、血糖降下、降圧、解熱を目的に、また、葉は枸杞葉とよんで、成分にルチンを含むことから、高血圧症に使用されます。

さらに、クコは若葉を日陰で乾燥し茶葉にして、高血圧によいお茶としても愛飲されますし、クコ酒は、枸杞子200g、グラニュー糖200gをホワイトリカー1.8Lに漬けて約2か月、疲労回復の薬用酒として飲まれています。

イーバンアト研究所 所長 薬学博士
田部昌弘

田部博士の【寄り道・脱線 生薬雑話】