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季節の生薬について

冬の薬草・薬木

冬の薬木 センリョウ:センリョウ科生薬名:九節茶(キュウセツチャ)

  • 冬の薬木 センリョウ:センリョウ科 生薬名:九節茶(キュウセツチャ) センリョウセンリョウ
  • 冬の薬木 キミノセンリョウキミノセンリョウ
  • 冬の薬木 センリョウの花センリョウの花

センリョウは本州中部以南の山林樹下の半日陰で、水湿、腐食質の多いところに自生していますが、その赤い実は縁起物としてお正月のお飾りによく使われます。
センリョウは千両。花言葉は利益、祝福、富、財産ですが、いずれも多くの実をつけることから付けられています。
花は黄緑色で、6~7月に咲きますが、葉の緑と同化して目立つ花ではありませんが、核果は冬に赤く色づきます。
なお、黄色い実を付けるキミノセンリョウもありますが、これはセンリョウの変種です。

名前の由来は、数多くの赤い実がなるヤブコウジ科マンリョウ(万両)に対し、実の数が少ないことからセンリョウ(千両)となりました。
実はこのセンリョウ、1億3千年前から生き続けてきた植物ともいわれ、長寿の木としてもお目出度い植物かもしれません。
日本ではあまり使われていないのですが、中国では夏に採取した若い枝や葉を乾燥したものを九節茶と呼び、抗菌、消炎、去風除湿、活血、止痛を目的に使用されています。クマロン、フラボン配糖体や精油などの成分が含まれています。

イーバンアト研究所 所長 薬学博士
田部昌弘

田部博士の【寄り道・脱線 生薬雑話】

冬の薬木 ヤツデ:ウコギ科生薬名:八角金盤(はっかくきんばん)

  • 冬の薬木 ヤツデ:ウコギ科 生薬名:八角金盤(はっかくきんばん)ヤツデ
  • 冬の薬木 ヤツデ:ウコギ科 生薬名:八角金盤(はっかくきんばん) ヤツデの花ヤツデの花

ヤツデは学名を Fatsia japonica といい、ウコギ科ヤツデ属の植物ですが、属名の Fatsia は日本語の「八」の古い発音「ふぁち・ふぁつ:室町時代まではHはFの発音」から来たといわれています。
葉の形が八つに分かれているからヤツデと思いますが、よく見ると八つに分かれた葉はなく、たいていは七つか九つに裂けています。八つは多いとの意味かもしれません。

新潟県以南の海岸近辺に自生する日本固有種で、花は晩秋から初冬にかけて、茎頂から黄白色の花穂を伸ばして、黄白色の小花を球状につけます。ヤツデの花には雄花と雌花の区別はありません。ひとつの花が、日が経つにつれて雄花から雌花に変わります。雄花の時期は雄性期(ゆうせいき)と呼ばれ、おしべが成熟して花粉を出し、蜜も出すが、やがておしべと花びらが散り、蜜も止まると、今まで小さかっためしべが伸び始めます。めしべが成熟するとふたたび蜜を出して虫を呼ぶ。この時期は雌性期(しせいき)と呼ばれます。おしべとめしべの成熟する時期がずれているのは、同じ花の花粉がめしべに着くことを避けるための工夫で、近親交配を防ぐための工夫がなされているのです。
ヤツデの開花時は昆虫が少ないことから、ブドウやカキなどの果実の糖度の三倍以上の甘い蜜を分泌し、昆虫を誘惑します。

ウコギ科の仲間には、オタネニンジン朝鮮人参、トチバニンジン竹節人参をはじめ、ウド、タラノキ、ウコギなどの有用植物が多いのですが、ヤツデには、葉に有効成分サポニンのα-アファトシンやβ-アファトシンなどが含まれ、鎮咳、去痰などの風邪の症状には用いられています。また、リューマチ・疼痛、腰痛などには、乾燥した葉を布袋に入れて鍋で煮出してから、そのまま風呂に入れて浴湯料として使用されます。

冬の薬草 カンアオイ:ウマノスズクサ科生薬名:土細辛(ドサイシン)

  • 冬の薬草 カンアオイ:ウマノスズクサ科 生薬名:土細辛(ドサイシン)
  • 冬の薬草 カンアオイ:ウマノスズクサ科 生薬名:土細辛(ドサイシン)
  • 冬の薬草 カンアオイ:ウマノスズクサ科 生薬名:土細辛(ドサイシン)

カンアオイ(寒葵)、別名カントウカンアオイは日本固有種で、本州(千葉県~東海地方)の太平洋岸に分布しています。
カンアオイの命名は冬にも葉が枯れず緑色であり、葉の形がアオイの葉に似ていることからきています。
ただ、このカンアオイの仲間は日本だけでも60種以上に上ります。
花は10月から2月に土に埋もれた状態で咲き結実するため、種の散布範囲が狭く、分布を拡大する速度が極めて遅い植物です。
そのため、分化も複雑で、地域ごとに種が異なっています。ミチノクカンアオイ、コウヤカンアオイ、スズカカンアオイをはじめとして地域に特有の形態を有しています。
なお、このカンアオイの仲間は岐阜蝶の食草として知られています。

薬草としては、開花期に根茎と根を掘り起こし、水洗い、乾燥、陰干しして用います。
ウスバサイシン(生薬:細辛)と比較すると、香気が弱く、薬効も弱いため土細辛と呼ばれていますが、鎮咳、発汗、胸痛などに用い、鎮静作用が期待されます。

このカンアオイの花の色は暗紫色で、葉に隠れて土から少し顔をのぞかせて咲くことで、あまり俳人や歌人の目に留まらないのでしょうか。詩歌の少ない植物です。

 崖の陽の零れを掬ふ寒葵    大岡千代子
 寒葵かがめば影をふやしたり  小田切輝雄
 軒下の日に咲きにけり寒葵   村上鬼城

冬の薬木 ロウバイ:ロウバイ科生薬名:臘梅花(ロウバイカ)

  • 冬の薬木 ロウバイ:ロウバイ科 生薬名:臘梅花(ロウバイカ)ロウバイ
  • 冬の薬木 ロウバイ:ロウバイ科 生薬名:臘梅花(ロウバイカ)ソシンロウバイ

ロウバイを梅の仲間と思われている方も多いようですが、ロウバイ(臘梅)はロウバイ科ロウバイ属で、バラ科サクラ属のウメの仲間ではありません。
原産地は中国で、17世紀ごろに渡来しました。名前の由来は、ひとつには、ロウ月(12月)に咲く梅との説と、花が梅と同じ時期に咲き、香りもよく似、花弁の色が蜜蝋に似ていることからとの説があります。花は葉に先駆けて、1・2月頃に開花します。

ロウバイの仲間にソシンロウバイ(素心臘梅)があり、花弁の色は中心まで黄色一色ですが、ロウバイは内側の花弁が赤紫色をしています。

ロウバイの花蕾を『臘梅花』『黄梅花』として薬用に用いています。
芳香は花蕾に含まれるシネオール、ボルネオール、リナロール等の精油成分によるものです。1月中旬頃に開花前の蕾を取り、日陰干しで風乾させ、生薬とします。

薬性は温、薬味は辛、無毒、中国では、暑を解し津液を生じる効能があり、熱病煩渇、咳嗽、火傷を治すとされ、民間薬でも咳、火傷などに用いることが有ります。

  臘梅や雪うち透かす枝のたけ  芥川龍之介
  臘梅の臘の花弁のやわらかき  鎌田健一

冬の薬木 ビワ:バラ科ビワ属生薬名:枇杷葉(ビワヨウ)

ビワはインドから中国の南部にかけてが原産地です。3000年前から仏教医学の中にビワの葉療法が取り入れられ、多くの治療に用いられてきました。
日本においては、江戸時代に「枇杷葉湯」として、夏の暑気払いに盛んに愛飲されました。 てんびん棒を肩に、「本家烏丸の枇杷葉湯、第一暑気払いと霍乱(急性下痢)、毎年五月節句よりご披露つかまつります」と口上を述べながら売り歩くさまは、大江戸や京浪花の夏の風物詩だったようです。
「枇杷葉湯」はビワの葉に肉桂、藿香、莪述、呉茱萸、木香、甘草などの気を巡らす生薬を同量混ぜて煎じたものです。
生薬の枇杷葉は、青々とした新鮮な葉の表面の柔毛をタワシなどで取り除き、水洗いして乾燥したものです。
有効成分として、ガン治療薬のアミグダリン(ビタミンB17)、精油、サポニン、ビタミンB1,ブドウ糖、クエン酸などを含み、酸性の血液を弱アルカリ性血液に変え、自然治癒力を促進する作用があるとされ、咳止め、暑気あたり、胃腸病、高血圧、糖尿病、リウマチなどに用いられています。
外用では、ビワ葉を火であぶるとビワ葉中のアミグダリンとエルムシンが反応して微量の青酸が発生し、それが皮膚から吸収され、多くの効果が発揮すると考えられています。
皮膚炎、やけど、水虫、ねんざにはアルコールエキスを塗布します。
ビワの果実はホワイトリカーに漬け、ビワ酒として疲労回復や食欲増進に飲まれています。

冬の薬草 アロエ:ユリ科生薬名:蘆薈(ロカイ)

  • 冬の薬草 アロエ:ユリ科
  • 冬の薬草 アロエ:ユリ科

原産地がアフリカ大陸とマダガスカル島のユリ科のアロエは、世界に300種ほどあり、日本には50種ほど栽培されています。中でも「医者いらず」と呼ばれて親しまれているのがキダチアロエです。
日本薬局方に蘆薈(ロカイ)の名で生薬として収載されているのは、アロエ・フェロックスやアロエ・アフリカーナの葉から採られた液汁を乾燥したものです。
アロエの苦味健胃薬・緩下剤としての使用は古く、紀元前に象形文字で書かれた「エーベンス・パピルス」にも記載があり、古代ギリシャのアリストテレスはアレクサンドロス大王が遠征の時、アロエを持参するよう勧めたといわれています。
民間では、キダチアロエの葉汁をそのまま飲むか、生葉を煮出した液を服用します。少量で健胃・消化不良などに効果を発し、量を増やすと便秘に良いとされています。ただ、注意が必要なのは、体力の弱い人は腹痛を起こすことがあります。これは生葉中に含まれるアンスロンという成分のためで、熱を加えたり乾燥するとアントラキノン類に変化し、腹痛が起こりにくくなります。
外用として、虫刺され、火傷、葉を開いて葉肉を患部に貼り付けると効き目がありますが、火傷が広範囲の時は専門の治療が必要です。
キダチアロエは冬に橙色の花を咲かせますが、歳時記に季語として収載されていません。夏に咲くアロエがあるからなのでしょうか。身近にある植物なのに不思議です。
アロエを詠んだ俳句を探してみました。
干大根細りきったりアロエ咲き清崎敏郎 この俳句の季語は干し大根、アロエは季語の扱いを受けていません。

冬の薬木 ツバキ:ツバキ科生薬名:種子

  • 冬の薬木 ツバキ:ツバキ科
  • ツバキ

  • 冬の薬木 サザンカ:ツバキ科
  • サザンカ

ツバキは木偏に春と書き、歳時記には春の季語となっていますが、実際には暖地では1月の終わりごろから3月にかけて開花します。
「椿」は国字で、中国の「椿(chun)」は別の植物です。中国で「椿は山茶」とありますが、日本で山茶は山茶花(サザンカ)です。
ツバキとサザンカは共にツバキ科ツバキ属のかなり近縁の植物です。見かけは非常によく似ていますが、サザンカは一枚一枚花弁が散り、ツバキの花は花弁全体が一緒に落花します。これは、サザンカの花弁は離弁ですが、ツバキは根元でくっついているからです。
さらにツバキの数十本ある黄色い雄しべの根元も一緒になり、花弁ともくっついているので、花の散るときは雄しべも付いて花全体が落花することになります。
中央にある一本の雌しべは頭柱が3裂し、子房に毛があるのがサザンカで、毛がないのがツバキです。

椿の種子には60%の脂肪油が含まれていて、軟膏基剤、頭髪用、食用、燈火用と繁用されています。また、この脂肪油は不乾性油で粘着性が少なく、空気酸化による酸化物も生じにくいことから、精密機械油等にも利用されています。山茶花にも椿と同様の脂肪油が含まれていて、ツバキ油と同様に用いられます。
材が堅く緻密なため、種々の細工物に用いられたりします。また、枝、葉を焼いて作った灰は、紫染めの媒染料として使われたことが、万葉歌にも見られます。

紫は灰さすものそ 海石榴市(つばきち)の
八十の衢(ちまた)に逢へる児は誰 (巻12-3101)

奈良県三輪大社の南、長谷詣で栄えた古代の市場、海石榴市(つばきち)の巷がありました。三輪山麓には椿の並木を植えていたので、その名が起こったものと思われます。
歌の大意は、「紫染めには椿の灰から取った灰汁に浸けた、その海石榴市の四通八達した巷で逢っているあなたは誰なのですか」、女性に名を尋ねる求婚の歌です。多くの男女が集まり、歌を詠み交わし求婚の機会とした「歌垣」が催しされたのがこの巷だったのでしょう。

冬の薬草 フクジュソウ キンポウゲ科フクジュソウ属生薬名:福寿草根(フクジュソウコン)

  • 冬の薬草 フクジュソウ キンポウゲ科フクジュソウ属
  • 冬の薬草 フクジュソウ キンポウゲ科フクジュソウ属

フクジュソウ(福寿草)は、日本、朝鮮半島、サハリン、シベリア東部、中国東北部に野生するキンポウゲ科の植物です。 旧暦の元旦頃に開花し、比較的長く黄金色の花を咲かせることから、幸福と長寿の意味を含めて「福寿草」と名付けられたといいます。また、元旦草(がんたんそう)、朔日草(ついたちそう)の別名もあります。 福寿草は江戸時代から、新春を飾るめでたい花として南天や梅、松と一緒に寄せ植えにして出回っていたようで、126種の園芸品種が作られていました。現在では紅花系、白花系、黄花系、墨色系と色の多様さと、八重咲き、段咲きなどの変化系のものも多く出回っています。 フクジュソウの根は生薬「福寿草根」として、強心、利尿を目的に用いられますが、作用が強いため、民間薬的に使うのは差し控えなければなりません。全草、特に根にはステロイド強心配糖体シマリンやアドニリドなどが含まれ、誤飲によって嘔吐、呼吸麻痺、痙攣などの中毒症状がでますので注意が必要です。
花言葉は、幸福、思い出、希望、祝福、おめでた等。鑑賞する花として愛でるのが賢明なのかもしれません。
福寿草さいて筆硯多祥かな鬼城
片づけて福寿草のみ置かれあり虚子

冬の薬草 スイセン:ヒガンバナ科スイセン属生薬名:水仙根(スイセンコン)

  • 冬の薬草 スイセン:ヒガンバナ科スイセン属
  • 冬の薬草 スイセン:ヒガンバナ科スイセン属

スイセン(水仙)は、冬~春に下向きにラッパ状の花を咲かせるヒガンバナ科スイセン属の耐寒性球根の植物です。 スイセンはスペインのカナリ―諸島原産で、ヨーロッパから、小アジアを経由して中国に渡り、日本に伝わりました。スイセン属の属名ナルキッソス(Narcissus)は、ギリシャ神話で美青年ナルキッソス(Narkissos)が泉の水面に映った自分の姿に恋して、かなわぬ思いを抱いたまま衰弱死した場所から生えた花とされ、その名前が付けられました。自己愛ナルシストの由来です。スイセン(水仙)は多くの品種があり、日本でよく見かける日本水仙(ニホンズイセン)は2~3月中旬、ラッパズイセン(喇叭水仙)は4~5月中旬に咲きます。 水仙根に含まれるリコリンやプソイドリコリン、タゼテインなどのアルカロイドは有毒で、誤食すると嘔吐、腹痛、脈拍頻微、下痢、呼吸不整、体温上昇などを起こし、昏睡、虚脱、痙攣、麻痺などを経て死に至ることがあるので、決して服用してはいけません。外用薬として、はれもの、乳腺炎、乳房炎や肩凝りに、生の球根をすりつぶして、小麦粉と酢でねり、紙に厚くのばして貼ります。中国では、花を水仙花といい、活血調経薬として子宮の諸症、月経不順に用いられているようですが、花にもアルカロイド成分を含んでいますので、使用に際しては注意が必要です。 スイセンは多くの詩歌に歌われていますが、なかでもワーズワースの「水仙」の詩は有名で、妹と旅したときに出会った水仙の群を、感動の中で思い出しつつ書いたとされています。

冬の薬木 ネズミモチ:モクセイ科生薬名:女貞子(じょていし・にょていし)

ネズミモチは関東以西に野生する低木で、沖縄、朝鮮半島、台湾にも分布があります。公園や垣根に多く植えられています。
夏、枝先に円錐状の色い多くの小花をつけ、果実は黒紫の楕円形で、ネズミの糞のようで、葉がモチノキに似ていることから、ネズミモチの名がついています。
中国にはネズミモチより実や葉が少し大きいトウネズミモチがあり、女貞といい、その果実を女貞子と呼び、強心、強壮、強精薬として用いられてきました。
漢方では、腎、肝を養い、膝腰を強くし、精力を養い、足腰の筋力低下、めまい、月経困難、白髪、視力低下、かすみ目にも効き目があるといわれています。 なお、女貞は冬でも葉が青い様子を貞女になぞらえて名づけられました。
オレアノール酸、ウルソール酸、マンニトールなどを含んでいます。オレアノール酸には強心、利尿作用があります。
焼酎につけた女貞酒は滋養、強壮の薬用酒です。果実の女貞子のほかに、樹皮は風邪の熱に、葉には抗菌作用があり、解熱の目的で利用されます。

冬の薬木 ミカン:ミカン科生薬名:陳皮(チンピ)青皮(セイヒ)枳実(きじつ)

柑橘類は、東南アジアが原産地です。日本へは中国大陸を経由して伝わりました。特に日本の代表的ウンシュウミカンは、中国浙江省の温州から渡来したとされていますが、鹿児島県の長島で品種改良されたものが起源のようです。花は5月の上・中旬頃に3cm程の白い5花弁の花を咲かせます。
成熟したミカンの外果皮を乾燥させたものを、生薬では陳皮と呼んでいます。陳皮の陳は古いという意味です。したがって、よく乾燥し、しばらく置いておくほうが、刺激性の少ない良薬となります。陳皮は健胃薬として多くの胃腸薬に配合されています。また、風邪の妙薬とされ、かぜ、せき、咽喉痛にも用いられます。一方、ミカンの皮を浴用剤として使用すると、血行が良くなり、湯冷めをしなくなります。
未熟果皮を青皮(セイヒ)と呼び、陳皮の健胃作用と同様に使いますが、化滞(不消化物の除去)作用は陳皮より強く、発汗・去寒の効能もあります。 ダイダイやナツミカンの未熟果実を乾燥したものを枳実と呼び、健胃・胸痛・腹痛・鎮咳去痰に用います。
尚、現在のウンシュウミカンが最盛期になる前は、キシュウ(紀州)ミカンが代表選手でした。
―蜜柑積み熊野王子の道塞ぐ大倉三遷子 ―紀勢線駅の木立に蜜柑生る広田 天涯

冬の薬草 ツワブキ:キク科生薬名:槖吾(タクゴ)

ツワブキ(石蕗)は本州中南部から九州にかけての海岸沿いに分布する常緑の多年生草本です。葉がフキに似て艶があるので「艶蕗」、あるいは葉に厚みがあるので「厚葉蕗」からこの名が起こったとも言われています。
晩秋から冬にかけて、60センチほどの花茎を伸ばし、菊に似た一重の黄金色の花をつけます。花も葉も鑑賞に堪える美しさがあり、庭によく植えられたりします。
葉や根茎には、ヘキセナールという成分が含まれており、強い抗菌作用があります。民間薬として、葉を火にあぶってから細かく刻んで打撲、湿疹、火傷、切り傷などに外用として用います。生汁を用いても同様の効果があります。
また、魚の中毒には乾燥した根茎を煎じて飲むか葉の青汁を飲んでも効果があるとされています。
フキと同じように若い葉柄は食用となります。春先に柔らかい葉柄を採り、灰汁抜きしてから皮をむいて食します。
―つわぶきの広がり寒う海が見え三宅冬子

冬の薬草 ナンテン:メギ科生薬名:南天実(ナンテンジツ)

ナンテンの名は中国名の南天竹からきたもので、中国から薬用、観賞用として伝えられ栽培されていたものが、種子が鳥によって散布され、今では東海から近畿以西の本州、四国、九州の温かい山地に自生しています。
秋から冬にかけて熟した果実を採集し、よく乾燥したものを南天実といい、咳止めの生薬として、漢方薬やのど飴の原料として用います。
実には赤実と白実があり、シロミナンテンの方が効き目がよいと俗に言われていますが、効き目に差はありません。
生薬の枇杷葉は、青々とした新鮮な葉の表面の柔毛をタワシなどで取り除き、水洗いして乾燥したものです。
祝い事で「赤飯」を配る時、その上にナンテンの葉を置く風習がありますが、これは「難を転じる」意味と、「ナンテンの葉が毒を消すので食中毒の心配はない」との意味があるとされています。
この事には化学的な証明がされています。ナンテン葉に含まれるナンジニンという成分が、熱い赤飯の上に乗せられると、解毒作用のある微量のチアン水素が発生し、赤飯を腐敗から守る働きをするからです。
ナンテンは実のほかに、葉は南天竹葉といい、南天実と同様の効き目があるとされています。茎は咳止めや強壮薬に、根は頭痛、筋肉痛などの痛み止めとして用います。