日頃、何気なく見ている花や食べているものが、ある症状に対して優れた効能を持つ生薬としても使われている、ということは珍しくありません。ここでは、そんな身近な植物や食べ物に秘められたパワーを解き明かしていきます。知識が増えることで、食べることがもっと楽しくなるかもしれません。
「家庭薬(市販薬)」の豆知識をお楽しみください。
カラスウリはカラシュウリからの転化で、中国から伝わった朱墨の原料である辰砂は卵形ほどの大きさのものもあり、それに似ていることからこの名前がつきました。カラスウリの根は王瓜根(オウカコン)または土瓜根(ドカコン)、果実を土瓜実、種子は王瓜仁といい、漢方生薬では共に、利尿、淨血薬として黄疸、下血に用い、また催乳の効果があります。一回り大きい黄色の実をつけた「キカラスウリ」の根からとったデンプンが天瓜粉(テンカフン)で、湿疹、その他の皮膚疾患に用いられます。
ナマコの中国名は「海参」と呼ばれます。海の人参の意味です。名前からも分かるように、人参と同じような薬効食効があるとされ、効果のあるサポニン成分が入っています。
海参は、味は鹹(カン:しおからい)、温性で高タンパク・低脂肪の食物です。腎を補い精を盛んにすることから、腎虚をはじめ虚弱体質、糖尿、乾燥便秘によいとされています。
外用では、ナマコから取り出したサポニン成分ホロトキシンが真菌に効果のある事がわかり、水虫、たむしの治療薬として開発されました。今でも、天然物の水虫薬として販売されています。
鮑(アワビ)の旬は6~9月ごろです。鮑には血を補い、血の巡りを良くし、肝の働きを緩和し、眼精疲労や充血、ストレス、不眠を改善する働きがあります。また、体の火照りを冷まし、水分代謝を促し、むくみの緩和にも効果があります。
栗の実には、胃腸の働きを高めたり、血流の改善効果や止瀉作用がありますが、更に老化防止の効果もあり、加齢による足腰の衰えや頻尿、難聴、耳鳴りなどの改善も期待できます。また、火傷やうるしかぶれに、樹皮や葉、毬(いが)を水で煮詰めたあと、冷ましてから、この汁で患部を洗えば効果があります。
漢方で用いられる麻黄(マオウ)は、他の生薬との組み合わせで、多くの効果を表すが、その一つは利水剤(体液のコントロール)としての位置づけです。桂枝があれば発表・発汗、石膏との組み合わせで止汗、杏仁と組めば喘に効きます。ただ、マオウやその主成分のエフェドリンは、咳止めや発汗剤として、多くのかぜ薬に含まれていますが、交感神経興奮作用のあることから、スポーツ競技のドーピング薬物に指定されているため注意が必要です。
薬膳では、四季それぞれにおいて、その気候に対応する食材を考えます。五行でいえば、夏は心臓に負担がかかり、汗による体液の消耗が激しい季節。このようなときに、薬膳では苦味で寒性のある食材を準備します。体の熱を取り除き、夏の暑さから体を守る(清熱解暑)食材として、セロリ・ゴーヤ・セリ・マコモ・スベリヒユ・蒲公英(タンポポ)・緑豆・バナナ・茶などがあり、また、体に大切な体液を生じ、のどの渇きを改善(生津止渇)する食材として、きゅうり・トマト・西瓜・メロン・豆腐などが考えられています。
乾燥させたベニバナの花は紅花(こうか)と呼ばれ、産前、産後、腹痛、月経不順、更年期で更年期障害など婦人病一般に繁用され、血行促進作用があるので血行障害による、瘀血(おけつ)、打撲症、腫瘍にも使われます。また、ベニバナの種子にはリノール酸が豊富に含まれ、食用油として使われ、血液中の動脈硬化予防やコレステロールの低下が期待されます。
モクレン科のコブシの仲間には、モクレン(白モクレン、紫モクレン)、タムシバ(ニオイコブシ)などがありますが、これらの蕾は生薬では辛夷(シンイ)と呼び、鎮静、鎮痛薬として、頭痛、頭重感などに用いられる。漢方薬の辛夷清肺湯や葛根湯加川芎辛夷にも配合され、鼻づまり、蓄膿症、慢性鼻炎を目標に服用します。また、樹皮は煎じてお茶の代わりや風邪薬として飲まれている。
桜餅に包むサクラの葉にはクマリンが含まれています。クマリンは配糖体の形で多くの植物に含まれるポリフェノールの一種で、特有の香があるため香料として利用されるほか、医薬品(むくみ改善など)として使用されます。
ナンテンの名は中国名の南天竹からきたもので、中国から薬用、観賞用として伝えられ栽培されていたものが、種子が鳥によって散布され、今では東海から近畿以西の本州、四国、九州の温かい山地に自生しています。
秋から冬にかけて熟した果実を採集し、よく乾燥したものを南天実といい、咳止めの生薬として、漢方薬やのど飴の原料として用います。実には赤実と白実があり、シロミナンテンの方が効き目がよいと俗に言われていますが、効き目に差はありません。
果物としておなじみのビワですが、その葉の表面の柔毛をタワシなどで取り除き、水洗いして乾燥したものは枇杷葉という生薬として利用されています。有効成分として、ガン治療薬のアミグダリン(ビタミンB17)、精油、サポニン、ビタミンB1,ブドウ糖、クエン酸などを含み、酸性の血液を弱アルカリ性血液に変え、自然治癒力を促進する作用があるとされ、咳止め、暑気あたり、胃腸病、高血圧、糖尿病、リウマチなどに用いられています。
晩秋から冬にかけて、60センチほどの花茎を伸ばし、菊に似た一重の黄金色の花をつけるツワブキという薬草があります。花も葉も鑑賞に堪える美しさがあり、庭によく植えられたりしますが、葉や根茎には、ヘキセナールという成分が含まれており、強い抗菌作用があります。民間薬として、葉を火にあぶってから細かく刻んで打撲、湿疹、火傷、切り傷などに外用として用いられています。