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季節の生薬について

生薬とは、植物・動物・鉱物などの天然物を簡単に加工して用いる薬のことを指しますが、ほとんどの生薬は薬草や薬木といった植物由来です。もちろん植物によって旬は異なるため、春夏秋冬、それぞれの季節の生薬があると言えます。ここでは季節ごとに、生薬として用いられる薬草と薬木を紹介いたします。

秋の薬草 ナデシコ:ナデシコ科生薬名:瞿麦(クバク)・瞿麦子(クバクシ)

  • 秋の薬草 ナデシコ:ナデシコ科 生薬名:瞿麦(クバク)・瞿麦子(クバクシ)カワラナデシコカワラナデシコ
  • 秋の薬草 ナデシコ:ナデシコ科 生薬名:瞿麦(クバク)・瞿麦子(クバクシ)ヒメハマナデシコヒメハマナデシコ
  • 秋の薬草 ナデシコ:ナデシコ科 生薬名:瞿麦(クバク)・瞿麦子(クバクシ)シナノナデシコシナノナデシコ

秋の七草のひとつ「ナデシコ」は、ナデシコ科ナデシコ属の総称、又はカワラナデシコの別称です。
北半球の温帯域を中心に約300種が分布しています。中でもヒメハマナデシコとシナノナデシコは日本にのみ自生している日本固有種で、他にはカワラナデシコとハマナデシコが分布しています。
ナデシコは撫子と書き、撫でたくなるほど可愛いことからの命名です。
薬用部分は全草を瞿麦(クバク)、種子を瞿麦子(クバクシ)と呼びます。

9月頃に、果実ごと全草を採取し、風通しの良い場所で陰干しにし、瞿麦とします。
更に、よく乾燥させ、手で静かに揉んで種子だけを集め、1~2日、日干しにして乾燥し瞿麦子とします。
成分にサポニンを含み、瞿麦は清熱・利尿・駆瘀血・通経作用があり、主に泌尿器系疾患に用います。また、瞿麦子には利尿、通経作用があり,民間で浮腫や月経不順に用いられてきました。
ただ、瞿麦子はかつて妊娠中絶薬として用いられており、妊婦の服用は禁忌です。
カワラナデシコはヤマトナデシコ(大和撫子)とも呼ばれています。

大和撫子は、日本女性の清楚な美しさやおしとやかさを表す言葉としても使われます。外見の美しさだけでなく、内面の強さや優雅さを兼ね備えた女性を指します。

この言葉は、奈良時代から使われており、当初は男女問わず使われていましたが、昭和以降は特に日本女性を指す言葉として定着しました。

イーバンアト研究所 所長 薬学博士
田部昌弘

田部博士の【寄り道・脱線 生薬雑話】