家庭薬の昔 日々進歩する家庭薬の昔をお伝えします!

季節の生薬について

生薬とは、植物・動物・鉱物などの天然物を簡単に加工して用いる薬のことを指しますが、ほとんどの生薬は薬草や薬木といった植物由来です。もちろん植物によって旬は異なるため、春夏秋冬、それぞれの季節の生薬があると言えます。ここでは季節ごとに、生薬として用いられる薬草と薬木を紹介いたします。

夏の薬木 キリ:ゴマノハグサ科生薬名:桐皮(トウヒ)・桐葉(トウヨウ)

  • 夏の薬木 キリ:ゴマノハグサ科 生薬名:桐皮(トウヒ)・桐葉(トウヨウ)
  • 夏の薬木 キリ:ゴマノハグサ科 生薬名:桐皮(トウヒ)・桐葉(トウヨウ)
  • 夏の薬木 キリ:ゴマノハグサ科 生薬名:桐皮(トウヒ)・桐葉(トウヨウ)

キリの名は「台切り」といって、「十分に苗木の幹を太らせたら、一度根元で切って、切り株から再び勢いのある芽を出させ、その部分を木材用の幹として無節で育てること」からきています。

東北地方に行くと、5月から6月にかけて紫色のキリの花で満開になりますが、この地方では、娘が生まれるとキリの木を2本植えて嫁入り道具の桐のタンスを作る準備をしたからです。
桐のタンスは、国産材の中でも最も軽量で、狂いや割れが少なく、湿気を吸って膨張します(湿気の多い場合には隙間を埋めて外気を遮断し、乾燥すると縮んで通気が良くなります)。
火事の時などは水をかけると、吸水するので燃えにくく、火や湿気に強く、生長が早い特性があって、タンス材としては20年目くらいのものが適しています。
タンス材以外に、高級な下駄や建具、長持、小箱、琴や琵琶などの楽器、羽子板、人形、仮面などにも使われています。

桐紋は、日本の家紋の中でも特に格式の高いものであり、武将や皇室に由来する紋章です。室町時代から戦国時代にかけて、功績のある武将に桐紋が下賜されました。明治時代以降も日本政府の公的な紋章として「桐紋」が採用されています。
現在でも日本国政府の紋章は「五七桐」です。

生薬としては民間薬的に、樹皮(桐皮)は痔疾、丹毒、打撲傷に、葉(桐葉)はでき物、外傷による出血に使われてきたほか、果実は気管支炎、木質部は足の腫れ、種子は止血、除虫剤、根・根皮はリウマチによる足の痛み、腫れ物、痔疾とキリの殆どの部位が使われてきました。

イーバンアト研究所 所長 薬学博士
田部昌弘

田部博士の【寄り道・脱線 生薬雑話】