生薬とは、植物・動物・鉱物などの天然物を簡単に加工して用いる薬のことを指しますが、ほとんどの生薬は薬草や薬木といった植物由来です。もちろん植物によって旬は異なるため、春夏秋冬、それぞれの季節の生薬があると言えます。ここでは季節ごとに、生薬として用いられる薬草と薬木を紹介いたします。
秋の薬木 キンモクセイ:モクセイ科生薬名:金木犀(キンモクセイ)
- キンモクセイ
- ギンモクセイ
毎年、9月~10月頃になると、甘い香りが漂ってきます。キンモクセイのオレンジ色の小さい花が咲いたのです。この香りから、ジンチョウゲ、クチナシと合わせて、日本の三大芳香木のひとつに数えられています。
キンモクセイ(学名 Osmanthus fragrans var. aurantiacus)はモクセイ科モクセイ属の常緑小高木樹で、白い花をつけるモクセイまたの名ギンモクセイ(学名: Osmanthus fragrans)の変種です。
中国原産で庭園樹や街路樹としてよく植栽されていますが、日本には花付きの良い雄株だけが導入されました。ギンモクセイの実を見たければ、中国まで出かけなければなりません。
モクセイを「木犀」(犀の木)と書くのは、樹皮が動物のサイ(犀)の肌に似ていることから名付けられたからです。
薬用部分は花で、胃炎、低血圧症、不眠症などに用いられます。
採取は、木の下にビニールなどを敷き、落ちてきた花を陰干しにして、乾燥した花30~50gを35度の焼酎1.8Lに入れ、3カ月ほど冷暗所に保管します。
胃の調子のよくない時は、盃一杯を湯か水で薄めて、低血圧症、不眠症には就寝前に服用します。
モクセイは中国では「桂花」と呼ばれます。桂花陳酒は、中国の白酒にキンモクセイの花を3年間漬け込んだ中国の混成酒で、楊貴妃が好んだ酒という言い伝えがあり、カクテルの楊貴妃にはこの酒が使用されています。