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季節の生薬について

生薬とは、植物・動物・鉱物などの天然物を簡単に加工して用いる薬のことを指しますが、ほとんどの生薬は薬草や薬木といった植物由来です。もちろん植物によって旬は異なるため、春夏秋冬、それぞれの季節の生薬があると言えます。ここでは季節ごとに、生薬として用いられる薬草と薬木を紹介いたします。

冬の薬木 ヤツデ:ウコギ科生薬名:八角金盤(はっかくきんばん)

  • 冬の薬木 ヤツデ:ウコギ科 生薬名:八角金盤(はっかくきんばん)ヤツデ
  • 冬の薬木 ヤツデ:ウコギ科 生薬名:八角金盤(はっかくきんばん) ヤツデの花 ヤツデの花

ヤツデは学名を Fatsia japonica といい、ウコギ科ヤツデ属の植物ですが、属名の Fatsia は日本語の「八」の古い発音「ふぁち・ふぁつ:室町時代まではHはFの発音」から来たといわれています。
葉の形が八つに分かれているからヤツデと思いますが、よく見ると八つに分かれた葉はなく、たいていは七つか九つに裂けています。八つは多いとの意味かもしれません。

新潟県以南の海岸近辺に自生する日本固有種で、花は晩秋から初冬にかけて、茎頂から黄白色の花穂を伸ばして、黄白色の小花を球状につけます。ヤツデの花には雄花と雌花の区別はありません。ひとつの花が、日が経つにつれて雄花から雌花に変わります。雄花の時期は雄性期(ゆうせいき)と呼ばれ、おしべが成熟して花粉を出し、蜜も出すが、やがておしべと花びらが散り、蜜も止まると、今まで小さかっためしべが伸び始めます。めしべが成熟するとふたたび蜜を出して虫を呼ぶ。この時期は雌性期(しせいき)と呼ばれます。おしべとめしべの成熟する時期がずれているのは、同じ花の花粉がめしべに着くことを避けるための工夫で、近親交配を防ぐための工夫がなされているのです。
ヤツデの開花時は昆虫が少ないことから、ブドウやカキなどの果実の糖度の三倍以上の甘い蜜を分泌し、昆虫を誘惑します。

ウコギ科の仲間には、オタネニンジン朝鮮人参、トチバニンジン竹節人参をはじめ、ウド、タラノキ、ウコギなどの有用植物が多いのですが、ヤツデには、葉に有効成分サポニンのα-アファトシンやβ-アファトシンなどが含まれ、鎮咳、去痰などの風邪の症状には用いられています。また、リューマチ・疼痛、腰痛などには、乾燥した葉を布袋に入れて鍋で煮出してから、そのまま風呂に入れて浴湯料として使用されます。