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季節の生薬について

生薬とは、植物・動物・鉱物などの天然物を簡単に加工して用いる薬のことを指しますが、ほとんどの生薬は薬草や薬木といった植物由来です。もちろん植物によって旬は異なるため、春夏秋冬、それぞれの季節の生薬があると言えます。ここでは季節ごとに、生薬として用いられる薬草と薬木を紹介いたします。

秋の薬草 ヒシ:ヒシ科生薬名:菱実(リョウジツ)

  • 秋の薬草 ヒシ:ヒシ科 生薬名:菱実(リョウジツ) ヒシヒシ
  • 秋の薬草 ヒシ:ヒシ科 生薬名:菱実(リョウジツ) ヒシ ヒシ
  • 秋の薬草 ヒシ:ヒシ科 生薬名:菱実(リョウジツ) ヒシの実 ヒシの実
  • 秋の薬草 ヒシ:ヒシ科 生薬名:菱実(リョウジツ) オニビシの実オニビシの実

ヒシ(菱)は学名を Trapa japonica といい、東アジアに広く分布し、日本では北海道から九州まで広く自生する水生植物です。
学名の属名Trapaはまきびし(撒菱)の意味で、忍者が用いる道具のひとつでもあります。
ヒシには多くの品種がありますが、その鑑別は果実で行います。
ヒシの果実は、4つのとげ(萼片)の内2つが発達し、通常残りのとげは脱落しています。
ヒシの仲間であるヒメビシやオニビシの果実には4つのとげがあります。そして、その1つが必ず上を向くことから、忍者が使ったヒシはオニビシかヒメビシであるといえる訳です。

李時珍は、菱実の項で「暑を解し、傷寒積熱を解し、消渇を止め、酒毒、射罔の毒を解す」と解熱、解毒の薬効を記載しています。
文中の「射罔の毒」は有毒成分アコニチンを有するトリカブトの毒ですから、使用は少し考え物です。現在は、滋養強壮、解熱を目的に使っています。

また、『食療本草』には、菱実は「生で食せば薬性は冷利である。多食すれば人の臓腑を冷やし、陽気を損傷し、莖を痿えさす」とあります。
菱実は体を冷やす作用があるので、食べ過ぎると、臓器の働きを弱め、元気を失い、精力(陰茎を萎えさす)を弱める、と言っています。

中国や台湾では、茹でたり焼いたりしてヒシの実をよく食べますが、栗の様な食感があり、高タンパクのおいしい食材です。
アイヌの人たちは、ヒシの実を「ペカンペ」と呼び、重要な食糧としています。