生薬とは、植物・動物・鉱物などの天然物を簡単に加工して用いる薬のことを指しますが、ほとんどの生薬は薬草や薬木といった植物由来です。もちろん植物によって旬は異なるため、春夏秋冬、それぞれの季節の生薬があると言えます。ここでは季節ごとに、生薬として用いられる薬草と薬木を紹介いたします。
夏の薬草 ドクダミ:ドクダミ科生薬名:十薬・重薬(ジュウヤク)
- ドクダミ 花
- ドクダミ 葉
ドクダミの学名は Houttuynia cordata といい、種名のcordata は「ハート型の・心臓形の」というように、葉がハート型をしています。
白い4枚の花弁のように見えるのは苞(特殊化した葉) で、中央部の黄色い花の集まり(花序)とで1つ花のように見えます。
東アジアから東南アジアに分布しており、日本では北海道南部から九州で見られる植物です。
このドクダミには独特の臭気があって、それは葉にふくまれる成分デカノイルアセトアルデヒドによるものです。この成分には殺菌作用があるため、水虫、おでき、ニキビなどに効果があり、傷口の化膿止めにつかわれます。
ただ、葉を乾燥すると、この成分は酸化され、殺菌効果は失われるとともに、特有の臭気はしなくなります。
生薬はジュウヤクの花期の地上部を使います。十分な乾燥をしておかないとカビが付きやすく、乾燥後は気密容器に入れての保存が必要です。
別の成分クエルシトリンには、利尿作用、強心作用、血管収縮作用などがあり、利尿、緩下剤、解毒の民間薬として利用されてきました。
「十薬」は十の薬効があることから、「重薬」は重宝なクスリから名付けられたともいわれています。
食用として、ドクダミの葉は加熱することで臭気が和らぐため、天ぷらにしたり、民間薬の薬効を期待してお茶としても広く飲まれています。