家庭薬の昔 日々進歩する家庭薬の昔をお伝えします!

季節の生薬について

生薬とは、植物・動物・鉱物などの天然物を簡単に加工して用いる薬のことを指しますが、ほとんどの生薬は薬草や薬木といった植物由来です。もちろん植物によって旬は異なるため、春夏秋冬、それぞれの季節の生薬があると言えます。ここでは季節ごとに、生薬として用いられる薬草と薬木を紹介いたします。

秋の薬草 イノコズチ:ヒユ科生薬名:牛膝(ゴシツ)

  • 秋の薬草 イノコズチ:ヒユ科 生薬名:牛膝(ゴシツ)
  • ヒカゲノイノコズチ

  • 秋の薬草 イノコズチ:ヒユ科 生薬名:牛膝(ゴシツ)
  • ヒナタノイノコズチ

秋の草むらを歩くと衣服に種が付く植物にイノコズチがあります。イノコズチはヒガゲノイノコズチとも呼ばれ、ほかにはヒナタノイノコズチ、ヤナギイノコズチがあり、日本には北海道を除く本州、四国、九州の山野、藪内、林野などいたるところに分布しています。

イノコズチは茎の節が膨らんで、猪子の膝のように見えることを槌に見立てて名づけられていますが、平安時代に編纂の「延喜式」には、「こまのひざ(駒の膝)」との表記があり、また、中国では牛膝と書き、生薬名にもなっています。

生薬の牛膝は根を使いますが、イノコズチの根はあまり肥大しないので、根が大きくなるヒナタノイノコズチを使います。
牛膝根や全草にはイノコステロン、エクジステロンなどの昆虫変態ホルモンがふくまれていて、昆虫の幼虫がイノコズチの葉を食べると変態が早まり、葉が食される被害から身を守るためだといわれています。
漢方では、利尿、通経、関節炎、脚気などに使います。ただ、子宮収縮作用があるため、妊婦への服用は禁忌とされています。

 ゐのこづちひとのししむらにもすがる 山口誓子
 背にとめて何のあかしのゐのこずち  加藤楸邨