家庭薬の昔 日々進歩する家庭薬の昔をお伝えします!

季節の生薬について

生薬とは、植物・動物・鉱物などの天然物を簡単に加工して用いる薬のことを指しますが、ほとんどの生薬は薬草や薬木といった植物由来です。もちろん植物によって旬は異なるため、春夏秋冬、それぞれの季節の生薬があると言えます。ここでは季節ごとに、生薬として用いられる薬草と薬木を紹介いたします。

春の薬木 アンズ:バラ科生薬名:杏仁(キョウニン)

  • 春の薬木 アンズ:バラ科  生薬名:杏仁(キョウニン)アンズ 花
  • 春の薬木 アンズ:バラ科  生薬名:杏仁(キョウニン)アンズ 実

杏(アンズ)は中国が原産ですが、本朝には弥生時代の遺跡からも出土していることから、古くから日本の土壌に定着してきました。
春に桜の花よりもやや早く淡紅色の花を咲かせ、6、7月頃、黄橙色の実をつけます。ウメやモモ、スモモ、アーモンド、プラムもこの仲間です。

漢方ではアンズの種子を杏仁(キョウニン)と呼び、鎮咳、去痰を目的に麻杏甘石湯や神秘湯に配剤されているほか、滋潤作用があるため、潤腸湯や麻子仁丸のような漢方便秘薬にも使われています。
中華料理の最後に出される杏仁豆腐は生薬の杏仁ですが、この時は杏仁(アンニン)と呼びます。

大学や製薬会社の名前にも使われている「杏林」は名医を指す言葉です。その謂れは、昔、呉の国に董奉(とうほう)という医者がいて、貧しい患者には治療費を貰う代わりにアンズの苗木を植えさせ、それが大きくなって杏の林になったことが由来となっています。

からももの花やくすしの一構 暮四
(アンズは「からもも」とも呼ばれています。)