生薬とは、植物・動物・鉱物などの天然物を簡単に加工して用いる薬のことを指しますが、ほとんどの生薬は薬草や薬木といった植物由来です。もちろん植物によって旬は異なるため、春夏秋冬、それぞれの季節の生薬があると言えます。ここでは季節ごとに、生薬として用いられる薬草と薬木を紹介いたします。
冬の薬木 ロウバイ:ロウバイ科生薬名:臘梅花(ロウバイカ)
- ロウバイ
- ソシンロウバイ
ロウバイを梅の仲間と思われている方も多いようですが、ロウバイ(臘梅)はロウバイ科ロウバイ属で、バラ科サクラ属のウメの仲間ではありません。
原産地は中国で、17世紀ごろに渡来しました。名前の由来は、ひとつには、ロウ月(12月)に咲く梅との説と、花が梅と同じ時期に咲き、香りもよく似、花弁の色が蜜蝋に似ていることからとの説があります。花は葉に先駆けて、1・2月頃に開花します。
ロウバイの仲間にソシンロウバイ(素心臘梅)があり、花弁の色は中心まで黄色一色ですが、ロウバイは内側の花弁が赤紫色をしています。
ロウバイの花蕾を『臘梅花』『黄梅花』として薬用に用いています。
芳香は花蕾に含まれるシネオール、ボルネオール、リナロール等の精油成分によるものです。1月中旬頃に開花前の蕾を取り、日陰干しで風乾させ、生薬とします。
薬性は温、薬味は辛、無毒、中国では、暑を解し津液を生じる効能があり、熱病煩渇、咳嗽、火傷を治すとされ、民間薬でも咳、火傷などに用いることが有ります。
臘梅や雪うち透かす枝のたけ 芥川龍之介
臘梅の臘の花弁のやわらかき 鎌田健一