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季節の生薬について

生薬とは、植物・動物・鉱物などの天然物を簡単に加工して用いる薬のことを指しますが、ほとんどの生薬は薬草や薬木といった植物由来です。もちろん植物によって旬は異なるため、春夏秋冬、それぞれの季節の生薬があると言えます。ここでは季節ごとに、生薬として用いられる薬草と薬木を紹介いたします。

秋の薬草 キキョウ:キキョウ科キキョウ属生薬名:桔梗根(キキョウコン)

  • 秋の薬草 キキョウ:キキョウ科キキョウ属
  • 秋の薬草 キキョウ:キキョウ科キキョウ属

万葉集に山上憶良が詠った秋の七草の歌があります。
「秋の野に咲きたる花を指折りてかき数ふれば七種(ななくさ)の花。萩が花、尾花、葛花、撫子の花、女郎花、藤袴また朝貌の花」
当時はキキョウを「あさがほ」と呼んでいました。
キキョウは東アジアに自生する多年草です。観賞用に栽培されることも多く、白花、八重、錦、二重、紋など多くの品種が知られています。
桔梗の読みの「ききょう」は「きちこう」が転じたものです。桔梗の木偏を取ると「吉更」となり、「さらに吉」となることから好まれ、明智光秀、柴田勝家、大田道灌、加藤清正などが桔梗紋を家紋として用いています。
キキョウの根にはプラチコジンというサポニンが含まれています。一般にサポニンの水溶液は消えにくい泡を作る性質があって、その適量は気管の痰を出やすくすることから、去痰・鎮咳や排膿の生薬として使われてきました。
但し、多量服用すると、悪心、嘔吐を催すこともあり注意が必要です。
また、太くて白いキキョウの根は流水中に十分さらしてあくを抜き、外皮を取りされ、漬物や山菜として食されます。