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季節の生薬について

冬の薬草・薬木

冬の薬木 ツバキ:ツバキ科生薬名:種子

  • 冬の薬木 ツバキ:ツバキ科ツバキ
  • 冬の薬木 サザンカ:ツバキ科サザンカ

ツバキは木偏に春と書き、歳時記には春の季語となっていますが、実際には暖地では1月の終わりごろから3月にかけて開花します。
「椿」は国字で、中国の「椿(chun)」は別の植物です。中国で「椿は山茶」とありますが、日本で山茶は山茶花(サザンカ)です。
ツバキとサザンカは共にツバキ科ツバキ属のかなり近縁の植物です。見かけは非常によく似ていますが、サザンカは一枚一枚花弁が散り、ツバキの花は花弁全体が一緒に落花します。これは、サザンカの花弁は離弁ですが、ツバキは根元でくっついているからです。
さらにツバキの数十本ある黄色い雄しべの根元も一緒になり、花弁ともくっついているので、花の散るときは雄しべも付いて花全体が落花することになります。
中央にある一本の雌しべは頭柱が3裂し、子房に毛があるのがサザンカで、毛がないのがツバキです。

椿の種子には60%の脂肪油が含まれていて、軟膏基剤、頭髪用、食用、燈火用と繁用されています。また、この脂肪油は不乾性油で粘着性が少なく、空気酸化による酸化物も生じにくいことから、精密機械油等にも利用されています。山茶花にも椿と同様の脂肪油が含まれていて、ツバキ油と同様に用いられます。
材が堅く緻密なため、種々の細工物に用いられたりします。また、枝、葉を焼いて作った灰は、紫染めの媒染料として使われたことが、万葉歌にも見られます。

紫は灰さすものそ 海石榴市(つばきち)の
八十の衢(ちまた)に逢へる児は誰 (巻12-3101)

奈良県三輪大社の南、長谷詣で栄えた古代の市場、海石榴市(つばきち)の巷がありました。三輪山麓には椿の並木を植えていたので、その名が起こったものと思われます。
歌の大意は、「紫染めには椿の灰から取った灰汁に浸けた、その海石榴市の四通八達した巷で逢っているあなたは誰なのですか」、女性に名を尋ねる求婚の歌です。多くの男女が集まり、歌を詠み交わし求婚の機会とした「歌垣」が催しされたのがこの巷だったのでしょう。

冬の薬草 フクジュソウ キンポウゲ科フクジュソウ属生薬名:福寿草根(フクジュソウコン)

  • 冬の薬草 フクジュソウ キンポウゲ科フクジュソウ属
  • 冬の薬草 フクジュソウ キンポウゲ科フクジュソウ属

フクジュソウ(福寿草)は、日本、朝鮮半島、サハリン、シベリア東部、中国東北部に野生するキンポウゲ科の植物です。 旧暦の元旦頃に開花し、比較的長く黄金色の花を咲かせることから、幸福と長寿の意味を含めて「福寿草」と名付けられたといいます。また、元旦草(がんたんそう)、朔日草(ついたちそう)の別名もあります。 福寿草は江戸時代から、新春を飾るめでたい花として南天や梅、松と一緒に寄せ植えにして出回っていたようで、126種の園芸品種が作られていました。現在では紅花系、白花系、黄花系、墨色系と色の多様さと、八重咲き、段咲きなどの変化系のものも多く出回っています。 フクジュソウの根は生薬「福寿草根」として、強心、利尿を目的に用いられますが、作用が強いため、民間薬的に使うのは差し控えなければなりません。全草、特に根にはステロイド強心配糖体シマリンやアドニリドなどが含まれ、誤飲によって嘔吐、呼吸麻痺、痙攣などの中毒症状がでますので注意が必要です。
花言葉は、幸福、思い出、希望、祝福、おめでた等。鑑賞する花として愛でるのが賢明なのかもしれません。
福寿草さいて筆硯多祥かな鬼城
片づけて福寿草のみ置かれあり虚子

冬の薬草 スイセン:ヒガンバナ科スイセン属生薬名:水仙根(スイセンコン)

  • 冬の薬草 スイセン:ヒガンバナ科スイセン属
  • 冬の薬草 スイセン:ヒガンバナ科スイセン属

スイセン(水仙)は、冬~春に下向きにラッパ状の花を咲かせるヒガンバナ科スイセン属の耐寒性球根の植物です。 スイセンはスペインのカナリ―諸島原産で、ヨーロッパから、小アジアを経由して中国に渡り、日本に伝わりました。スイセン属の属名ナルキッソス(Narcissus)は、ギリシャ神話で美青年ナルキッソス(Narkissos)が泉の水面に映った自分の姿に恋して、かなわぬ思いを抱いたまま衰弱死した場所から生えた花とされ、その名前が付けられました。自己愛ナルシストの由来です。スイセン(水仙)は多くの品種があり、日本でよく見かける日本水仙(ニホンズイセン)は2~3月中旬、ラッパズイセン(喇叭水仙)は4~5月中旬に咲きます。 水仙根に含まれるリコリンやプソイドリコリン、タゼテインなどのアルカロイドは有毒で、誤食すると嘔吐、腹痛、脈拍頻微、下痢、呼吸不整、体温上昇などを起こし、昏睡、虚脱、痙攣、麻痺などを経て死に至ることがあるので、決して服用してはいけません。外用薬として、はれもの、乳腺炎、乳房炎や肩凝りに、生の球根をすりつぶして、小麦粉と酢でねり、紙に厚くのばして貼ります。中国では、花を水仙花といい、活血調経薬として子宮の諸症、月経不順に用いられているようですが、花にもアルカロイド成分を含んでいますので、使用に際しては注意が必要です。 スイセンは多くの詩歌に歌われていますが、なかでもワーズワースの「水仙」の詩は有名で、妹と旅したときに出会った水仙の群を、感動の中で思い出しつつ書いたとされています。

冬の薬木 ネズミモチ:モクセイ科生薬名:女貞子(じょていし・にょていし)

ネズミモチは関東以西に野生する低木で、沖縄、朝鮮半島、台湾にも分布があります。公園や垣根に多く植えられています。
夏、枝先に円錐状の色い多くの小花をつけ、果実は黒紫の楕円形で、ネズミの糞のようで、葉がモチノキに似ていることから、ネズミモチの名がついています。
中国にはネズミモチより実や葉が少し大きいトウネズミモチがあり、女貞といい、その果実を女貞子と呼び、強心、強壮、強精薬として用いられてきました。
漢方では、腎、肝を養い、膝腰を強くし、精力を養い、足腰の筋力低下、めまい、月経困難、白髪、視力低下、かすみ目にも効き目があるといわれています。 なお、女貞は冬でも葉が青い様子を貞女になぞらえて名づけられました。
オレアノール酸、ウルソール酸、マンニトールなどを含んでいます。オレアノール酸には強心、利尿作用があります。
焼酎につけた女貞酒は滋養、強壮の薬用酒です。果実の女貞子のほかに、樹皮は風邪の熱に、葉には抗菌作用があり、解熱の目的で利用されます。

冬の薬木 ミカン:ミカン科生薬名:陳皮(チンピ)青皮(セイヒ)枳実(きじつ)

柑橘類は、東南アジアが原産地です。日本へは中国大陸を経由して伝わりました。特に日本の代表的ウンシュウミカンは、中国浙江省の温州から渡来したとされていますが、鹿児島県の長島で品種改良されたものが起源のようです。花は5月の上・中旬頃に3cm程の白い5花弁の花を咲かせます。
成熟したミカンの外果皮を乾燥させたものを、生薬では陳皮と呼んでいます。陳皮の陳は古いという意味です。したがって、よく乾燥し、しばらく置いておくほうが、刺激性の少ない良薬となります。陳皮は健胃薬として多くの胃腸薬に配合されています。また、風邪の妙薬とされ、かぜ、せき、咽喉痛にも用いられます。一方、ミカンの皮を浴用剤として使用すると、血行が良くなり、湯冷めをしなくなります。
未熟果皮を青皮(セイヒ)と呼び、陳皮の健胃作用と同様に使いますが、化滞(不消化物の除去)作用は陳皮より強く、発汗・去寒の効能もあります。 ダイダイやナツミカンの未熟果実を乾燥したものを枳実と呼び、健胃・胸痛・腹痛・鎮咳去痰に用います。
尚、現在のウンシュウミカンが最盛期になる前は、キシュウ(紀州)ミカンが代表選手でした。
―蜜柑積み熊野王子の道塞ぐ大倉三遷子 ―紀勢線駅の木立に蜜柑生る広田 天涯

冬の薬草 ツワブキ:キク科生薬名:槖吾(タクゴ)

ツワブキ(石蕗)は本州中南部から九州にかけての海岸沿いに分布する常緑の多年生草本です。葉がフキに似て艶があるので「艶蕗」、あるいは葉に厚みがあるので「厚葉蕗」からこの名が起こったとも言われています。
晩秋から冬にかけて、60センチほどの花茎を伸ばし、菊に似た一重の黄金色の花をつけます。花も葉も鑑賞に堪える美しさがあり、庭によく植えられたりします。
葉や根茎には、ヘキセナールという成分が含まれており、強い抗菌作用があります。民間薬として、葉を火にあぶってから細かく刻んで打撲、湿疹、火傷、切り傷などに外用として用います。生汁を用いても同様の効果があります。
また、魚の中毒には乾燥した根茎を煎じて飲むか葉の青汁を飲んでも効果があるとされています。
フキと同じように若い葉柄は食用となります。春先に柔らかい葉柄を採り、灰汁抜きしてから皮をむいて食します。
―つわぶきの広がり寒う海が見え三宅冬子

冬の薬草 ナンテン:メギ科生薬名:南天実(ナンテンジツ)

ナンテンの名は中国名の南天竹からきたもので、中国から薬用、観賞用として伝えられ栽培されていたものが、種子が鳥によって散布され、今では東海から近畿以西の本州、四国、九州の温かい山地に自生しています。
秋から冬にかけて熟した果実を採集し、よく乾燥したものを南天実といい、咳止めの生薬として、漢方薬やのど飴の原料として用います。
実には赤実と白実があり、シロミナンテンの方が効き目がよいと俗に言われていますが、効き目に差はありません。
生薬の枇杷葉は、青々とした新鮮な葉の表面の柔毛をタワシなどで取り除き、水洗いして乾燥したものです。
祝い事で「赤飯」を配る時、その上にナンテンの葉を置く風習がありますが、これは「難を転じる」意味と、「ナンテンの葉が毒を消すので食中毒の心配はない」との意味があるとされています。
この事には化学的な証明がされています。ナンテン葉に含まれるナンジニンという成分が、熱い赤飯の上に乗せられると、解毒作用のある微量のチアン水素が発生し、赤飯を腐敗から守る働きをするからです。
ナンテンは実のほかに、葉は南天竹葉といい、南天実と同様の効き目があるとされています。茎は咳止めや強壮薬に、根は頭痛、筋肉痛などの痛み止めとして用います。

冬の薬草 ビワ:バラ科ビワ属生薬名:枇杷葉(ビワヨウ)

ビワはインドから中国の南部にかけてが原産地です。3000年前から仏教医学の中にビワの葉療法が取り入れられ、多くの治療に用いられてきました。
日本においては、江戸時代に「枇杷葉湯」として、夏の暑気払いに盛んに愛飲されました。 てんびん棒を肩に、「本家烏丸の枇杷葉湯、第一暑気払いと霍乱(急性下痢)、毎年五月節句よりご披露つかまつります」と口上を述べながら売り歩くさまは、大江戸や京浪花の夏の風物詩だったようです。
「枇杷葉湯」はビワの葉に肉桂、藿香、莪述、呉茱萸、木香、甘草などの気を巡らす生薬を同量混ぜて煎じたものです。
生薬の枇杷葉は、青々とした新鮮な葉の表面の柔毛をタワシなどで取り除き、水洗いして乾燥したものです。
有効成分として、ガン治療薬のアミグダリン(ビタミンB17)、精油、サポニン、ビタミンB1,ブドウ糖、クエン酸などを含み、酸性の血液を弱アルカリ性血液に変え、自然治癒力を促進する作用があるとされ、咳止め、暑気あたり、胃腸病、高血圧、糖尿病、リウマチなどに用いられています。
外用では、ビワ葉を火であぶるとビワ葉中のアミグダリンとエルムシンが反応して微量の青酸が発生し、それが皮膚から吸収され、多くの効果が発揮すると考えられています。
皮膚炎、やけど、水虫、ねんざにはアルコールエキスを塗布します。
ビワの果実はホワイトリカーに漬け、ビワ酒として疲労回復や食欲増進に飲まれています。